13.「貝堀りする人」と「歩くカモメ」。

干潮になった大きな川で、人が貝堀りをしていました。
ミレーの「落ち穂拾い」のような光景です。
印象的だったのは、
貝を掘っている人のそばに、カモメが停まって大人しくしていることでした。
人のやっていることをじっとみているのです。
人を恐れていないのです。
おこぼれをもらうためなのでしょうが、あまりに落ち着いているので、
まるで人を見守っているかのような印象を受けたのでした。

人の邪魔をしない鳥たちと、鳥たちを気にしない人たち。
その共存。
この風景にタイトルをつけるなら、「平和」です。
その、人とカモメの間に、モノのやりとりや助け合いなどはありません。
ただ、同じ時、同じ場所にいて、静かにしているだけです。
その時はたと気づく。
「思いやり」や「助け合い」というのは、権利であって義務ではないと。
だから、自分の踏み出す一歩が思いやりに満ちていなくても、
気負うことはないのです。